2022.10.02
ガラスの動物園
イヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出
新国立劇場中劇場
演劇
イヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出「ガラスの動物園」@新国立劇場中劇場。 いやー、すごかった! なんか、とにかくエグいんだよね。ゲイの作家の書いた戯曲を、ゲイの演出家が立ち上げてるという先入観もあるんだろうけど、男2人はまとも、女2人はおかしい、というのが徹底されてるように見えて。 https://t.co/uCkZcuBY5i2022-10-02 15:20:07 GMT+9:002022-10-02 15:20:07 GMT+9:00
結構笑いの起きる場所もある演出だったんだけど、自分はほとんど笑えなくて。 笑っているひとのセンスがどうか、みたいな話ではなくて、女性のあさましさをゲイの演出家がノンケ向けの笑いにしているのを、自分が笑っちゃうのはどうか、みたいなところで、エグさが先にきちゃって笑いにならなくて。2022-10-02 15:30:25 GMT+9:002022-10-02 15:30:25 GMT+9:00
イヴォ・ヴァン・ホーヴェは映像を含めていくつか見ているのだが、やっとピンときたかも。 偏見まみれの事を言いますが、無造作な悪意に満ちた世界を、意地の悪いオカマが、丁寧に悪意をなぞって立ち上げる、みたいなしんどさに溢れているところが持ち味なのかなと。2022-10-02 15:36:29 GMT+9:002022-10-02 15:36:29 GMT+9:00
ジムが黒人の方で、見る前は特になんとも思っていなかったんだけど。 途中で「風と共に去りぬ」の名前を出して、後半にアマンダが南部の事を楽しそうに語るじゃないですか。お屋敷で召使たちに囲まれて、みたいなのを。 それを黒人のジムがニコニコと聞くというグロテスクさをやりたかったのか! と。2022-10-02 15:41:55 GMT+9:002022-10-02 15:41:55 GMT+9:00
アマンダって、端から端まで無理なキャラなわけですが、南部での(黒人を搾取して成り立っていた)楽しい暮らしを、黒人に向かって嬉しそうに語るという、ステージ写真だけならのどかな風景なのに、現場で見てるとめちゃくちゃしんどいシーンとして作り上げちゃうのは、ホントすごいよ。2022-10-02 15:46:50 GMT+9:002022-10-02 15:46:50 GMT+9:00
この話、家を捨てた父親と、その跡を辿る息子と、家に取り残される母娘なので、男視点だけど男が悪役っぽくなりがちだと思うんだけど、今回は、あー、こういう女性陣に付き合って人生を棒に振るぐらいなら、罪悪感に苛まれ続けるだろうけど、出奔して別の人生選ばなきゃダメだよね、と思う作りで。2022-10-02 15:50:03 GMT+9:002022-10-02 15:50:03 GMT+9:00
アマンダのトムに対する態度と、ジムに対する態度をみていると、あー、なるほど、父親が家にいた時もそーゆー感じだったんでしょうねー、家を出たくなってもしょうがないやつだ、というのがありありと目に浮かびますよね。 どこが、というより、細かいディテールの積み重ねでそう感じるのかな。2022-10-02 16:29:03 GMT+9:002022-10-02 16:29:03 GMT+9:00
「ガラスの動物園」 アマンダもなかなかでしたが、今回すっごいなと思ったのがローラ。かなり背の低い方を配役していて、こちらも最初は特に意味がないのかと思っていたら、途中から、この体格だからこそという使い方をされていて、うっわーとなった。 常に、パパと娘、という形で男と接するんだよね。2022-10-02 21:58:42 GMT+9:002022-10-02 21:58:42 GMT+9:00
セットは全面を天鵞絨のようなもふもふ生地で貼ってあって、毛並みの向きによって色が変わる。それを使ってたくさんの男の顔が書いてあるんだけど、ちょうど冒頭でトムが父親の話をしている時にそれに気づいて、気持ち悪くて仕方がない空間つくったもんだなと感服していたのだけれど。2022-10-02 22:03:58 GMT+9:002022-10-02 22:03:58 GMT+9:00
壁に触る事で、父親の顔を消すのが2箇所あって、1つめがどのシーンだったか思い出せないのだけどローラが中央の大きな顔を手で横に撫でつけてしまう、2つめはローラとジムのダンスの最中に、リフトされた足で父親の顔を踏みつけて消すという、そうきましたかーと、うなっちゃうよね。2022-10-02 22:07:09 GMT+9:002022-10-02 22:07:09 GMT+9:00
ローラの造形、珍しい解釈じゃないかと思うんだけど、足は器質的には回復していて飛んだり跳ねたりできるのに、精神状態を反映して歩くのが難しくなったりする。 彼女が抱えているのは精神的な問題だけなのだが、弟に養ってもらうという事を当然のように受け入れていて、それは代理父親を感じさせる。2022-10-02 22:11:41 GMT+9:002022-10-02 22:11:41 GMT+9:00
ローラの体の小ささを使った演出として、トムにもジムにも子供のように抱きついて軽々と運ばれるというシーンを作ってある。 そして、彼女の態度も「無邪気な愛情表現」としてパパに抱きついたり腕の中に潜り込んだり、みたいなのを頻繁に入れてくる。これ、個人的には、女の狡さの演出だよねーと。2022-10-02 22:15:08 GMT+9:002022-10-02 22:15:08 GMT+9:00
ローラって、大人として社会に向き合うのを拒否して、「パパの娘」としての生き方を選んだ女性として描かれてるのかなと。 最初は本当の父親、次は弟、その次はジムと「無邪気な愛情表現」を振り撒くことで相手を「パパ」にさせるという。 まぁ、弟は、こういう姉の面倒見て一生潰せないよなと。2022-10-02 22:18:24 GMT+9:002022-10-02 22:18:24 GMT+9:00
最近、トキシックマスキュリニティーという話をよく聞くせいもあって、そうか、これはトムがそこから解放される話でもあるんだなと。 男は家庭を支えるために稼がなくちゃいけない、女は妻や娘として男の稼ぎを使って生きていく事に疑問を持たなくていい、という家父長制から脱却する話なわけで。2022-10-02 22:27:16 GMT+9:002022-10-02 22:27:16 GMT+9:00
これは自分がそう感じるだけなのかもしれないけど、演出家の目線は男性陣にはあたたかいよね。 男女の扱い、自分はちょっといたたまれなさを感じるぐらいに差があるように感じて、そこも全体のエグい印象に繋がるんだよな。自分のミソジニーが写されて見えるので、精神的に疲弊する。2022-10-02 22:30:55 GMT+9:002022-10-02 22:30:55 GMT+9:00
というわけで、演劇的には凄まじく充実しているが、見てるとやたらと削られて疲弊し、それでもトムくんはそれなりに幸せに生きていけそうだとちょっとホッとするけど、女性二人は野垂れ死にしてもしょうがないかなと思う自分にグッタリとするという、大変にグラグラとする観劇でした。2022-10-02 22:34:34 GMT+9:002022-10-02 22:34:34 GMT+9:00
しかし、これ、見る人によって全然感想違いそうだよな。自分は、さすがに女性の扱いアレすぎない? みたいに思ったのだけど、女性陣がベタ褒めしているツイートが結構回ってきていて。 観劇前なので中身は読まないでいたんだけど、あとで検索して読んでみよう。2022-10-02 22:38:16 GMT+9:002022-10-02 22:38:16 GMT+9:00
あ、ひとつ気になったのが字幕。フランス語上映で日英両方の字幕が出るのだが、少し内容が違うので、両方ながめて舞台も見てで、完全に目が足りなかった。 日英仏で、どれくらいニュアンス違うのかな。2022-10-02 22:42:00 GMT+9:002022-10-02 22:42:00 GMT+9:00
そういえば、トムくんは、毎晩映画館にいって「アドベンチャー」してるみたいなんだけど、さすがにお盛んすぎないですかね。まぁ、22歳ぐらいの設定のはずだからそんなもんなんですかね、みたいな事を思ったりしたのだけど、戯曲や演出的には、そこらへんはどういう解釈なんだろう。2022-10-02 22:54:41 GMT+9:002022-10-02 22:54:41 GMT+9:00
これは何が影響しているのか全然わからないのだけど、いろんなものに対する解像度が高く感じて。高すぎて疲弊するぐらいに。 例えば、ユニコーンの角が折れるシーン、特に明示的な何かがあるわけではないのだが、ロボトミー手術と同性愛矯正とが自然に思い出されて、二人の態度が多層的に見えたり。2022-10-02 23:16:05 GMT+9:002022-10-02 23:16:05 GMT+9:00
リツイートしたさえぼう先生の感想を読んで、あ、ユニコーンの角が折れるのは「私を傷物にしたんだから責任を取って」の象徴なのかなと思いついて。 そして、丁寧に拒絶されるのと、未練がましく傷物を押し付けるのとに、グルグルしちゃいますなと。2022-10-02 23:31:31 GMT+9:002022-10-02 23:31:31 GMT+9:00
衣装でひとつ気になったのが、アマンダが着る昔のドレス。 ウエストの上に縦方向にたるんだ部分ができるんだよね。昔はぴったりだったのに、無理してハイウエストで着ているという設定なのかな。 あ、書いてて思いついた。もしかして、胸が小さくなると、その分だけ生地が余るの? どうなんだろう?2022-10-02 23:35:26 GMT+9:002022-10-02 23:35:26 GMT+9:00
リツイートした徳永さんの評も面白かった。 個人的には、ローラとジムのシーンって、あー、いるいる、ノンケ男ってこういうメンヘラ不思議ちゃんにクラっとくるんだよね、というのをゲイ目線で描いている雰囲気を感じて疲弊したんだけど、多分ストレートの方々はそういう斜めな見方はしないんだな。2022-10-03 00:03:06 GMT+9:002022-10-03 00:03:06 GMT+9:00
検索してパラパラと感想を読んだのですが、なんか、自分はあれだな、こういう女性ホントやだというのを、イヴォ・ヴァン・ホーヴェの作品に重ねて見ちゃってるんだろうな。2022-10-03 01:20:26 GMT+9:002022-10-03 01:20:26 GMT+9:00
アマンダが黒人に南部の話する所、あれは、こういうシチュエーションが揃わないと気づかない人もいるようですが、彼女の本質はコレで、他の部分での発言も基本的に同じくらい無神経だから子供達は大変なんですよ、と観客に説明してるのかなと思ったのだけど、そういう受け取り方してる人みかけないな。2022-10-03 01:24:38 GMT+9:002022-10-03 01:24:38 GMT+9:00
ジムに黒人を配役して、ああいう差別性の強調するのって、ゲイっぽい感性だったりするのかな。 さんざん差別発言した後に、えー、あなたがゲイだってわかってたら、あなたの前ではこういう話はしなかったのにー、先に言ってよー、みたいなのに飽き飽きしてるから、あそこがすごくピンときたのかも。2022-10-03 01:41:11 GMT+9:002022-10-03 01:41:11 GMT+9:00
「ガラスの動物園」 いまさらだけど、毎晩映画館に行く事に関する争いって、トムのセクシャリティーに関する争いなんだろうか。 隠喩という事ではなくて、表には出さないけど映画館に何をしに行くかをうすうすわかった上で、アマンダはトムのアイデンティティーを否定しているという話なのかな。2022-10-04 01:16:57 GMT+9:002022-10-04 01:16:57 GMT+9:00
リツイートを見て、それなんだよなと。 差別の中でも、目で見た途端にわかる属性と、そうじゃない属性があって、例えば黒人差別女性差別なんかは前者、ゲイ差別在日差別なんかは後者になるわけだけど、ジムに黒人の役者を配して両者を繋いで観客に見せつけるのが、ホーヴェの手腕だなと。2022-10-04 01:50:39 GMT+9:002022-10-04 01:50:39 GMT+9:00