2024.02.17
マノン
パリ・オペラ座バレエ団
東京文化会館
バレエ
パリ・オペラ座バレエ団「マノン」@東京文化会館、幕間。 ミリアム・ウルド=ブラームの踊りが素晴らしく好み。振付と音楽を細かく分析して、キャラクターとしてどう踊るかを綿密に計算して一曲を組み立てているんだと思う。 特に腕と顔の角度の細やかな表現のバリエーションは信じられないぐらい。 https://t.co/Yp0lNMH0Kr https://pbs.twimg.com/media/GGg_BEkaoAACvh8.jpg https://pbs.twimg.com/media/GGg_BCfbAAAgzm0.jpg2024-02-17 14:28:11 GMT+9:002024-02-17 14:28:11 GMT+9:00
キャラクターとしては、田舎町の町一番の美少女、ぐらいの、等身大というか、中の人がパリオペエトワールなので、等身大以下に作ってあるような。 ガニオのデ・グリューが、お前、そのルックスで教会の広告塔としてスカウトされただろう、みたいな雰囲気あるので、出会いは王子に憧れる少女みたい。2024-02-17 14:31:11 GMT+9:002024-02-17 14:31:11 GMT+9:00
寝室は、ものすごい完成度だった。同じ事を二度三度やるときに、それを完璧に踊り分ける。 最初の方の、男女で相手を回すパートで、ちょっとマノンが頷くのはオリジナル? あ、ここって、そういう事! とめっちゃ納得したのだけど、そういう振付の解釈が実施での説得力を増すのが随所に感じられて。2024-02-17 15:34:44 GMT+9:002024-02-17 15:34:44 GMT+9:00
寝室、もちろん振付として優れていると思ってはいたのだけど、今日はロミオとジュリエットのバルコニーに匹敵するぐらいの作品だと思うほど、少女の恋心の表現が素晴らしくて。 この PDD の実施としては、最高のものの一つだったのでは、と思うぐらいだ。2024-02-17 15:38:24 GMT+9:002024-02-17 15:38:24 GMT+9:00
男性陣は、マチュー・ガニオに、アンドレア・サリのレスコー、フロリモン・モリューのGM という組み合わせ。 GM もちょっとイイ男系なんだけど、マノンの方が全く心を許してない踊りをするので、よろめき系にはならないのが面白い。 というか、GM に対するマノンは、戦闘状態に近い気がする。2024-02-17 15:40:15 GMT+9:002024-02-17 15:40:15 GMT+9:00
GM とレスコーとのトロワ、黒鳥を思い出したり。パリオペ版は黒鳥もトロワなので、そうか、同じ構造なんだと。2024-02-17 15:41:37 GMT+9:002024-02-17 15:41:37 GMT+9:00
「マノン」終演。 素晴らしかった、そして、本当に本当に酷い話だった。これだけマノンに感情移入した事も、これだけデ・グリューを許せんと思った事もなかったと思う。 これでデ・グリューは国に帰って貴族のおっさんに拾われてのうのうと生きるのかと思うと。一度死んでゾウリムシからやり直せ!2024-02-17 16:35:04 GMT+9:002024-02-17 16:35:04 GMT+9:00
「マノン」 1幕最後のマノンの前には、いわばオデットとして生きる道と、オディールとして生きる道があって。そこでオディールとして自力で富を得る人生を選び、そのために恋を捨てるわけですよ。 あれだけの幸福感に満ちた「寝室」と、終始体に硬さの残る GM との踊りの後で、その決断を下す。2024-02-17 21:22:10 GMT+9:002024-02-17 21:22:10 GMT+9:00
2幕のマノンは、唯一の仲間であるはずの兄は泥酔し、孤立無援の中、身一つで自分の立場を勝ち取るために戦うわけで。 それを強く感じたのが、複数の男性によるいくつかのリフト。女王と下僕でもなく、性暴力の雰囲気でもなく、男性陣との力関係ではギリギリで頂点に立っているようなバランス。2024-02-17 21:32:50 GMT+9:002024-02-17 21:32:50 GMT+9:00
そうやって、女が一世一代の勝負に挑んでいるところに、来るわけですよ、デ・グリューが。本人はそれを愛だと思っているけど、要するに就職の面接日に、俺だけのものでいてって泣きついてキャンセルさせるようなもんですよ。養える稼ぎもないのに、わがまま言うなゴルァ、ですよ。2024-02-17 21:37:08 GMT+9:002024-02-17 21:37:08 GMT+9:00
まぁ、ガニオのデ・グリューにああいう踊りをされちゃったら心が揺れるのもわかる。わかるけど、それはオネーギンの「手紙」のラストで、オネーギンに転んじゃうようなもので、その手はとっちゃダメなんだよー、と思いながら見ちゃうわけで。 案の定、イカサマもまともに出来なくて、全てぶち壊しに。2024-02-17 21:39:48 GMT+9:002024-02-17 21:39:48 GMT+9:00
2度目の寝室。今回、ここがものすごく腑に落ちたというか、こういうシーンだったのかと。もはや単純な恋人同士には戻れない2人なんだな。 最初は再び愛を確かめ合おうとするんだけど、なんとなく少しズレがあって、前のようには心が浮き立たない。マノンの世界が広がってしまったせいか。2024-02-17 21:44:37 GMT+9:002024-02-17 21:44:37 GMT+9:00
ブレスレットに関する諍いでそれが明確になるんだけど、この時に、マノンはデ・グリューから愛されているのは、自分の中のオデットだけで、オディールの側面は愛されていないと感じて、それで、この人とは一緒に行けないかもと迷い出したんじゃないかと。 でも、状況はそれを許さなくて。2024-02-17 21:48:30 GMT+9:002024-02-17 21:48:30 GMT+9:00
マノンには2回選択肢が与えられていて。1幕のトロワの後で、恋を選ぶか、富を選ぶか。2幕のデ・グリューのバリエーションの後で、彼を受け入れるか受け入れないか。 やっぱり途中での心変わりは道が険しいんだなと。素敵な神学生に泣いて縋られても、一度してしまった決断を曲げる事で歪みが出る。2024-02-17 21:58:33 GMT+9:002024-02-17 21:58:33 GMT+9:00
今回、本当に酷い話だと思ったのは、2度目の選択でデ・グリューを選んだがゆえに、デ・グリューとの愛は半分しか本物じゃなかったという事に気づくという皮肉な構造と、しかも、その時にはデ・グリューにすがるしか道が残されていないという凋落ぶりと。2024-02-17 22:06:54 GMT+9:002024-02-17 22:06:54 GMT+9:00
3幕のマノンは登場した時から死相があって。ポワントでガクッと膝が砕ける歩き方をするので、不穏感にリアルな不安が上乗せされる。 ある種、ジゼルの狂乱の場みたいな、沼地に入る前にすでに半分は幻影の世界にいる。2024-02-17 22:35:21 GMT+9:002024-02-17 22:35:21 GMT+9:00
看守はアルチュス・ラヴォーで、悪くはなかったのだけど、今回の話では、できれば、癆咳病みの女の抵抗など指一本で抑えられる的な圧倒的リフト力による悲惨さの表現が欲しかった。 無理なのはわかってますが、ユーゴ・マルシャンの看守とかいかがですかね。2024-02-17 22:44:49 GMT+9:002024-02-17 22:44:49 GMT+9:00
「沼地」は、これぞマクミランだなぁと。リフトのポジションで美しさを捨てるんですよ。普通の人間がしがみつくだけ、みたいなポジションが入る。 マクミランが「醜くなるのを恐れるな」と言ったそうですが、ここまでを全て美しく踊りきって初めて、醜さによってマノンが全てを奪われた事が示される。2024-02-17 22:52:55 GMT+9:002024-02-17 22:52:55 GMT+9:00
そういうわけで、今回のデ・グリューは、マノンから全てを奪った男に見えて。 どうせ船旅の途中で、淫らな行いを神に懺悔して許してもらおうとか言ってマノンのメンタルを破壊してきたんでしょ、エッチな女が好きなくせに結婚するなら処女がいいとか言い出す男の身勝手を体現するような男だよねと。2024-02-17 23:04:34 GMT+9:002024-02-17 23:04:34 GMT+9:00
マチュー・ガニオはオネーギンを見た時にも思ったのだけれど、こういった男の傲慢や醜さを演じられるのは、やはり年齢を重ねた芸の深みだよなと。人間性に対する洞察と言ってもいいかも。 これを若い男が地の傲慢さでやったら見てられないじゃないですか。2024-02-17 23:12:39 GMT+9:002024-02-17 23:12:39 GMT+9:00
ミリアム・ウルド=ブラームは、パリオペとしては異質な踊り方ではないのだろうか、と思ったのだけど。 上手く言えないんだけど、スタイルで踊っていると感じるところがなくて、全部の動きを演技から構築している感じで。 あ、でも、これこそがスタイルを極めた者にだけ可能な事なのかも。2024-02-17 23:41:27 GMT+9:002024-02-17 23:41:27 GMT+9:00
造形的に完璧なポジションはここ、という基準位置がわかっていて、そこに、心が浮き立つならこっちに、心を鎧で守るならこっちに、というプラスアルファの表現を載せられるから、美と感情を両立させられる、という事になったりするのかな。2024-02-17 23:54:13 GMT+9:002024-02-17 23:54:13 GMT+9:00
今日は音楽がとてもよく聞こえて。ウルド=ブラームの音楽性が高いという事だと思う。 自分は単体でクラシックを聴くと寝ちゃう人なんですが、踊りが拾っている音はよく聞こえてくるのです。ここら辺の音楽的感性って他人と比べるのが難しいから、どれくらい「普通」なのかわからないんだけど。2024-02-18 00:02:22 GMT+9:002024-02-18 00:02:22 GMT+9:00
例えば、同じフレーズの二度目をより大きく鳴らす、みたいなのに対する感受性がめっちゃ低いんですが、そこに、同じ振付の二度目をより強い角度で踊る、というのが組み合わさると、突然に音の違いがわかって曲の意味が理解できる、みたいになるんですよね。2024-02-18 00:07:35 GMT+9:002024-02-18 00:07:35 GMT+9:00
深夜になったので、下ネタですが。 マノンの看守のシーン、いつ見ても「早っ」と思ってしまう。レミゼの工場長と勝負できる早さだと思う。長くやるようなシーンじゃないのはわかりますが、それにしても。 あれ、待って、意にそわぬ愛人やる相手としては最高の資質じゃない?2024-02-18 01:15:19 GMT+9:002024-02-18 01:15:19 GMT+9:00
「マノン」といえば、沼地のセットがインパクトあると思うんだけど、前にこういう呟きをしたら、実際の風景を教えていただいて、うわ、そういうことか! となったのでした。 https://t.co/fT3i3ZN5aD https://x.com/hawk_v/status/10127347482113064962024-02-18 11:51:14 GMT+9:002024-02-18 11:51:14 GMT+9:00
木からとろろ昆布みたいなのがあんなに垂れ下がっている中を遊歩道もなしで逃げ回ったら、亡霊たちに取り憑かれるのも無理ないよな。2024-02-18 11:52:49 GMT+9:002024-02-18 11:52:49 GMT+9:00
リツイートした「マノン」の英語レビュー記事の最初の写真、生で見たときにギョッとしたのだけど、写真で見ても支えているというよりも、浮いているのを引き寄せているように見える。 超絶技巧の一瞬をよく切り取って、しかも記事のサムネにまでしてくれてありがたい。 https://t.co/h7X3Lf3xFJ https://bachtrack.com/review-paris-opera-ballet-manon-tokyo-bunka-kaikan-february-20242024-02-22 22:59:47 GMT+9:002024-02-22 22:59:47 GMT+9:00
「寝室」は youtube にいくつかあるんだけど、普通は支えているのがはっきりわかる形で、ここまで浮いているように見えるのはないよな。 Gilbert, Marchand https://t.co/toFEFRyprU Dupont, Bolle https://t.co/0jlBSp8CJY Nuñez, Bonelli https://t.co/tk8nQP1NyH https://youtu.be/pGtSnTKgmFE?si=y-bJwK1a3rNexF1r&t=699 https://youtu.be/KIlMullAk4U?si=Vqy3G6kfm5PlAFtt&t=238 https://youtu.be/pyAdb6xTel8?si=-3OKuWDt68jSU-Xq&t=2202024-02-22 23:10:30 GMT+9:002024-02-22 23:10:30 GMT+9:00
しかし、この一瞬のリフトだけでも、4つ並べてみると全然違うよな。どれが優れてるとかじゃなくて、それぞれが表現として何を選んでいるか。 キスする直前みたいなペアから、天女を地上に引き留めようとしているみたいなペアまで。2024-02-22 23:20:25 GMT+9:002024-02-22 23:20:25 GMT+9:00